後期近代における形式的平等性と実質的位階制――ギリシャによるドイツ金融資本への叛乱――旧東独マルクを媒介にした考察
20150706後期近代における形式的平等性と実質的位階制――ギリシャによるドイツ金融資本への叛乱――旧東独マルクを媒介にした考察
後期近代において世界システムへの叛乱は、無意味になっている。欧州中央銀行(EZB=ECB)は、実質上ドイツ・フランス金融資本によって制御されている。また、国際通貨基金(IWF=IMF)は、国際金融資本によって制御されている。まさに、両者は現代社会におけるシステム的合理性を担っている。
両者に対して、ギリシャ政府は公然と反旗を翻した。「借金は返済しない」、「借金は借金で返済する。もっと、もっと資金を援助しろ」という言説を振りかざした。年金はこの5年間で50%削減された。これ以上の削減はできないと。あまつさえ、これは国民の意思である。2015年7月5日に実施された国民投票で確認されたと。
欧州金融システムにとって、このような言説は無意味である。もし、ギリシャがユーロを離脱すれば、年金半減どころではない。10分の1以上に削減される。10%削減ではない。90%削減である。政府がどのようにユーロとの公式交換比率を設定しようとも、市場ではその5分の1程度に買い叩かれる。それは旧東独マルクが実証している。東独崩壊前の1988年には80-90%削減された。公式レートでは、1対1でドイツマルクと旧東独マルクを交換できた。しかし、実質的には、1対8あるいは9であった。この交換比率は闇市場のものではない。旧西ドイツ、そして旧西ベルリンの銀行の窓口で表示されたものである。ギリシャの新たな紙幣は、公然と買い叩かれるであろう。5つ星ホテルにおいて、ユーロでしか決済されないであろう。ギリシャ国民が、ユーロを希求する。ギリシャ政府がどのような通貨を発行しようとも、国際決済ではユーロしか通用しない。
欧州共同体において、ドイツとギリシャは、形式上平等である。しかし、実質的にはギリシャはドイツから借金しなければ生活できない。世界金融システムの上位に位置するドイツと、そのほぼ制御下にあるギリシャは、対等ではありえない。もし、欧州中央銀行から資金の提供を受けなければ、銀行すら開店できない。しかも、この1週間、ギリシャは巨額の債務がありながら、公共交通の費用、あまつさえ携帯電話の費用を税金で負担した。いうなれば、借金は返済しないが、我々ギリシャ国民の生活水準は落とさないと宣言している。金融システム担当者の癇に障る行為である。
もっとも、このような暴挙の結末はいまだ定かでない。上記の言説も推論でしかない。ギリシャ国民の選択がどのような結末を迎えるのか、近代思想史研究家にとって興味深い。
追記
このギリシャの言説、「借金は新たな借金で返済する」という言説は、住専問題のときの桃源社社長の態度を思い出させた。大丈夫であろうか。