花輪和一論1 根源的寂寥感
花輪和一は、かなり多くの著作を残している。しかし、執筆動機あるいはその主題は限られている。その限定された主題の一つが、寂寥感あるいは寂しさである。おそらく、花輪和一本人に由来する寂しさからの脱却である。マンガをほとんど読まないひとでも、彼の名著、『刑務所の中』を知らない人はいないであろう。このマンガは映画化もされ、今でもYouTube等で視聴できる。この名著が世に出る契機になったことは、彼自身の銃刀法違反である。実弾と実銃を所持していた。この非合法の趣味の根源も、花輪和一自身の感情に由来しているように思える。
この『風童』も寂しさという感情の根源を主題にしたマンガである。寂しさからの脱却あるいはそれを気にしないことになる過程を描いている。自然の営みにおいて、動物も植物も寂しいという感情を持たない。あるいは、他者と自分とを比較せず、日々与えられた課題を遂行するかぎり、人間もまたそのような感情を抱くこともない。この感情に囚われていた少女が、自然の営為を見て気づく名場面である。
« 花輪和一論2 世を忍ぶ仮の姿と、職業に貴賎あり | トップページ | 『浮浪雲』から学ぶ人生論(1)、(2)、(3)、(4)総括ーーいつも一人であることと、寂寥感の克服 »
「アニメ・コミック」カテゴリの記事
- 田村伊知朗への連絡方法ーーコメント欄へ(2022.10.06)
- 花輪和一論2 世を忍ぶ仮の姿と、職業に貴賎あり(2021.05.18)
- 花輪和一論1 根源的寂寥感(2021.05.19)
- シャルリ・エブド社の風刺画をめぐる緒論--Judentum, Mohammedanismus, Fukushima und Erdogan (2020.11.23)
- 『浮浪雲』から学ぶ人生論(1)、(2)、(3)、(4)総括ーーいつも一人であることと、寂寥感の克服(2021.07.21)
「近代という時代認識」カテゴリの記事
- ドイツ帝国市民運動・ライヒスビュルガー (Reichsbürger)ーードイツ的なものの喪失という思想状況(2022.12.09)
- 闇の夜に鳴かぬ烏の声聞けば――中村天風試論 暫定的結論(2022.11.15)
- 「闇の夜に鳴かぬ烏の声聞けば――中村天風試論」における「珈琲時間」の統合(2022.10.23)
- 研究会報告原稿 (2022.01.21)
- 田村伊知朗への連絡方法ーーコメント欄へ(2022.10.06)
「花輪和一」カテゴリの記事
- 田村伊知朗への連絡方法ーーコメント欄へ(2022.10.06)
- 花輪和一論2 世を忍ぶ仮の姿と、職業に貴賎あり(2021.05.18)
- 花輪和一論1 根源的寂寥感(2021.05.19)
- 『浮浪雲』から学ぶ人生論(1)、(2)、(3)、(4)総括ーーいつも一人であることと、寂寥感の克服(2021.07.21)
- 花輪和一とホッブス(2015.11.25)