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討論会ーー公共交通無料化に関する討論会

20190109 旅客近距離公共交通の無料化という提案に関するメモランダム

0. ドイツのいくつかの都市において、旅客近距離公共交通の無料化という実験が開始されようとしている。
1. 都市内の自然環境の悪化――その原因として動力化された個人交通の増大――他の要因、たとえば工場からの排気ガス等は、削減されている。また、家庭内暖房の多くは、地域集合暖房等に切り替えられており、環境破壊の要素は少ない。
2. 個人交通から公共交通へのモーダルシフト――公共交通が大量交通を本質することによって、交通量の縮減――環境破壊の軽減
3. 旅客近距離公共交通の無料化という衝撃――議論を引き起こす――交通縮減が議論対象になったことは、別の観点たとえばエネルギー浪費の縮減と同様に、好ましい。
4. 旅客近距離公共交通の無料化は、モーダルシフトだけを目的にしていない。
  その歴史――貧困層の移動自由の確保――人権をより強度にする。この目的の一つは、地域経済の活性化にある。しかし、本来、移動できなかった人が、移動の自由を確保することによって何が生じるのであろうか。経済活性化に寄与しない。
  海賊党による提案――公共放送のように、事前に料金を徴収する。
5. モーダルシフトが生じる。しかし、どのような階層であろうか。従来、旅客近距離公共交通の料金の高さによって、歩行あるいは自転車走行を余儀なくされていた階層からのモーダルシフトが生じる。
5.1 徒歩によってしか、買物をしなかった階層を例にとれば、逆に、ベンツ等の高級車を運転していた階層、あるいは運転士付きの公用車を使用していた階層からのモーダルシフトは、生じない。無料化は、これらの階層にとって、無関心である。一日当たり数百円を節約するために公共交通を選択しないという階層しか、公共交通の無料化に関心を示さない。
6. 無料化という選択肢は、別の要素を孕んでいる。移動ではなく、別の目的が混入する。たとえば、麻薬密売人の商行為、あるいは冬場における暖房を取ることを目的にした家なき人々が乗車する。また、筆者がドイツの旅客近距離公共交通において目撃した光景によれば、外国人が公共交通の車両において酒盛りを始めていた。当然、アルコールによる異臭は、車両全体を充満していた。しかも、かなり風呂に入っていないようでもあった。このような光景が
これは、旅客近距離公共交通の質を低下させる。動力化された個人交通から公共交通へのモーダルシフトを阻害する要因になる。
7. 無料化されていない他の公共交通、たとえば自治体によって運営されていない都市高速鉄道の経営を圧迫する。

財源
1. 地方自治体によって運営されている旅客近距離公共交通は、地方税の増大。国家、州政府からの援助
2. 運営費用が増大し、税金がそれに対応しなければならない。国税であろうと、自治体の税金であろうと、州の財源であろうと
3. 旅客近距離公共交通の改善、たとえば路線の延長、車両の増大、運行間隔の短縮化、車両の快適性の拡大には、向かわない。
4. 旅客近距離公共交通の運営者の賃金が抑制される。交通技能の減少、研修機会の減少によって、交通事故が拡大する。モーダルシフトが実施されにくくなる。

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公共交通原論」カテゴリの記事

コメント

ヨーロッパを中心に広まりつつある、公共交通の無償化について、その背景や実態を論じ、それによって生じる課題や今後の展望などについて私自身の考えを交えて述べていく。
 まず、公共交通無償化が広まりつつある要因は、車の利用によって進む大気汚染への対策と渋滞の緩和が主とされている。公共交通無償化によって、公共交通機関の利用率を増加させ、車の利用を減少させることによって、大気汚染防止を推し進めることが最大の目的と言える。
 公共交通無償化はフランスやベルギーなどヨーロッパの都市を中心に広まりつつあり、ドイツでは5つの都市で行われている。最大規模は、人口40万人強を誇るエストニアの首都「タリン」で、5年前から公共交通無償化が行われている。エストニアはその規模を全国にまで拡大する意向だ。
 このようにヨーロッパが積極的に公共交通無償化を進めて行く背景には、やはり車の使用率の高さと、それに比例して悪化する大気汚染の問題が大きい。特にドイツでは、公共交通無償化による車の利用減少だけではなく、特定の道路でのCO2排出制限を設けるなど、車の利用減少に積極的だ。このように、公共交通無償化には、公共交通機関の利用率を高めることによる、車の利用減少を促進し、大気汚染を改善する効果が期待されている。
 このように見ると、公共交通無償化はメリットが大きいように思える。しかし、大きな課題として挙げられるのが、財政の問題だ。多くの公共交通機関が、国営や市営などによって運営されているが、無償化となると、運営費から利用費まで、そのすべてを負担することとなり、財政の負担が圧迫されることは容易に想像できる。このように、公共交通無償化はただ良い面だけではなく、行っていく上での課題もあるというのが現状だ。
 さて、これらのことを踏まえたうえで、公共交通無償化に対する私の考えとともに、上記以外の視点から見た公共交通無償化についての側面について述べていく。
 まず、私は公共交通無償化については、課題に対するしっかりとした対応策を持てるのであれば賛成できるという意見を持っている。課題に対するしっかりとした対応策については後述する。公共交通無償化に対しては、非常に肯定的であり、日本でも行うべきであるというのが基本的な私の意見だ。
 なぜなら、上記のような車の利用を減少させることによる、大気汚染の改善はもちろん地球規模として見ても、非常に得策に思う。それに加えて文化の面においても、公共交通無償化は効果があるように思える。公共交通機関の利用が増加し、車の減少が進むと、道路の作りや街並みもそれに応じて変化してくる。例えば、車が交通手段の大半を占めると、買い物をする場所や、人々の行動する場所に大きな駐車場や大きな道路が必要不可欠になる。そうすると、歩道が減り歩いて立ち寄る商店街のような小さなお店が減少したり、全国に展開するような大きな規模のお店が多くなってしまう。
 そうすることで、街並みは独自性を失い、街としてすべて同じような、代わり映えのしない生活空間が出来上がってしまう。この問題を解消するという点においても、公共交通無償化は効果をもたらすと考える。車の利用が減り、公共交通機関の利用が増えると人々の歩行文化が形成され、それに伴った街の文化も形成されることは、公共交通無償化がもたらす大きなメリットであると考えてよいだろう。
 では次に、先ほど述べた、課題に対するしっかりとした対応策について論じる。まず、公共交通無償化の最大の課題はやはり、財政の問題だ。運営費・維持費を含めた全てのコストを国や市などの地方自治体が運営していくのは、非常に負担が大きい。その問題に対するしっかりとした対応策を打ち出し、実行することが可能であるならば、公共交通無償化は大きく前進すると考える。例えば、いち早く公共交通無償化に踏み切ったエストニアでは、公共交通無償化によって悪化した財政を、公共交通無償化に魅力を感じ移住してくる住民が増えたことによる、税収増によって立て直したという事例がある。
 私は、この課題に対して、「民間企業の支援」が重要になるのではないかと考えている。完全に民営化にすることは、公共交通機関の仕組みや、様々なことにおいて困難な点が多いため、民間企業が支援を行うというスタイルが、最も財政課題を克服できるのではないかと考えている。先ほどの、街並みの問題にも繋がってくるが、地域に根付いた民間企業が、その地域特有の街並みや、お店などを守っていくという思いで、街の公共交通無償化に支援することは、地域に住む全ての人にとって得策と言えるのではないだろうか。
 このように、公共交通無償化に対しては、財政の課題をしっかりと乗り越えることが出来る解決策をつくることができるのであれば、私は大いに賛成だ。自分が住む街、大きく言えば国の街並みや、環境問題などを大切にしていきたい気持ちが、公共交通無償化に繋がるのではないかと私は思う。 

投稿: 右投左打 | 2019年1月31日 (木) 02時41分


無料公共交通について

はじめに
 北海道において、赤字路線が増加しており、その運営が困難であるという事実が、ニュースや地方紙でたびたび取り上げられている。民営化によって、財源の安定した確保が困難になっている現状および、JR北海道の赤字が増加している状況について、自治体や住民さえ頭を悩ませている。
 かわって、ドイツでは、路面電車をはじめとする公共交通の無料化が加速しているという。
 

ドイツの無料公共交通の試験的導入
 上では、無料化が加速しているといったが、これでは語弊がある。ドイツにおける国民への無料公共交通の提供は、現段階では試験的導入であり、いまだ手探りの状態である。この国が本政策(公共交通の無料化)を試験的に導入した背景には、EUの存在があった。環境大臣や農業大臣、官房長官などへ宛てられた書簡には、大気汚染問題を抱える都市で公共交通の無料化にする案などが上げられていたという。そもそも、ヨーロッパ委員会は大気汚染問題について、ドイツにプレッシャーをかけており、2018年1月にもこの問題に対応するよう促していた。また、窒素酸化物や微粒子状物質などの汚染物質に関するEUの条規に反した場合、罰則が科される旨をも示唆している。
 この書簡を参考に、ドイツ政府は、ボン、エッセン、ヘレンベルク、ロイトリンゲン、マンハイムの5つの都市を対象に、公共交通の無料化を試験的に導入した。これら5つの都市のデータを参考に、もっとも有効であると思われる手段を、全都市に適用するとしている。

ドイツ・公共交通無料化の課題
 公共交通の無料化となると、利用者にとっても良いニュースに聞こえる。しかし、やはり一番のネックとなるのは、財政上の問題だ。ドイツ地方議会の議長であるHelmut Dedy氏はこの提案について、公共交通の無料化は連邦政府が財政的負担をしなければならないと語る。ただし、ドイツが試験的に公共交通の無料化を進めているのは、環境問題への対応としての一政策であるから、各自治体に対して、財政的援助を敷くかどうかは、不透明である。公共交通の無料化が完成したところで、運転手等供給の確保が十分になされるかといった課題も出てこよう。無料化はもっぱらEUからの圧力や環境問題対策といった政治的側面ばかりで、ドイツ国内の経済事情を満足に考慮できていないという批判も可能であろう。
公共交通の無料化の例は、世界各地で見られている。アジアで言えば韓国のソウルや台湾でも、実施されたことがあるようだ。
この公共交通の無料化は1970年代から実験されている。イタリア・ローマにて試験的にバスの無料化が実施された。その結果、6ヶ月間で利用者の増加はほとんどなかったようだ。その後、アメリカでもこの政策は実施されたが、結局自動車通勤をする人々をも巻き込むことはなかったという。これらの例をそのままドイツの交通事情に適用するのは短絡的ではあるが、自動車を保有する人々が積極的に公共交通を利用するだろうという見込みは、どうも期待できそうにない。
一方で、全体的無料公共交通ではないが、通勤ラッシュ時よりもはやく出発する電車を無料にすることでラッシュのピーク時よりも乗客を減らすことに成功するといった例も挙げられているそうだ。
 全世界で試みられたこれらのテストの成果は、公共交通の無料化を実施する上で、重要な参考資料となるだろう。一概に公共交通の完全無料化とは行かないまでも、その工夫のあり方によって、混雑の解消等に一躍買うことになるだろう。もっとも、ドイツのように、公共交通を無料化することによって、渋滞の解消・緩和や環境問題への十分な対策となるだろうと見立ててそのまま試験導入したことは、これまでの例をもって少々短絡的であるといわざるを得ない。

おわりに
 公共交通の無料化が試験的であれ、世界各地で行われている事実について、私は驚いた。一方の日本は、水道など、公共財の民営化に取り組んでいる。極端な見方をすれば、日本政府の動向は、世界に逆行しているようにも見える。 
はじめにでも上げたとおり、北海道では、赤字路線の廃止が検討されている。一方、ドイツのような取り組みを研究することで、このような事態に陥っている路線を救うきっかけになるだろうと私は考えている。すなわち、赤字路線の国営化である。だが、課題は多い。新幹線のような、全国を高速で結ぶ路線であればともかく、一地方の、それこそ国民の大多数は生涯乗ることもないような路線に税金を投入することに賛同するのは、その地域の住民と、一部の理解者だけであろう。自治体が受け持つとしても、財政的圧迫が大きい。ただ、従来の路線を財政的な理由で廃止してしまうのは惜しい。
近代交通思想史では、「交通」を主題とした政治学を取り扱った。教育大通りの開発のエピソードは、「実感をもてた」からこそ衝撃的であった。道路等の「交通」については、実はその思想性がよく出ている政策の一つであると感じた。(2076字)

<参考文献>
「電車やバスも乗り放題?!ドイツで公共交通を無料にする案を検討中」Switch news
https://switch-news.com/politics/%E9%9B%BB%E8%BB%8A%E3%82%84%E3%83%90%E3%82%B9%E3%82%82%E4%B9%97%E3%82%8A%E6%94%BE%E9%A1%8C%EF%BC%9F%EF%BC%81%E3%83%89%E3%82%A4%E3%83%84%E3%81%A7%E5%85%AC%E5%85%B1%E4%BA%A4%E9%80%9A%E3%82%92%E7%84%A1/
https://gigazine.net/news/20180216-free-transport-for-air-pollution/
http://news.livedoor.com/article/detail/9891055/
http://www.fdot.gov/research/Completed_Proj/Summary_PTO/FDOT_BC137_38_FF_rpt.pdf

投稿: 6263 | 2019年1月24日 (木) 13時25分

 現代において、世界中で問題視されている環境問題については、各国でもはや無視できない問題となっている。この環境問題のひとつを形成するものが大気汚染の問題である。日本にとっては、戦後の高度経済成長期における公害問題や、近隣の国家だと中国・北京などの大気汚染問題が代表的なものであるが、現在の欧州ではこれが深刻な問題となっている。EU圏内でも有数の大国であるドイツでもそれは例外ではなく、ミュンヘンやシュツットガルトでは特に深刻であるという。このようなドイツに対してEUは、大気汚染に対する努力が不十分であるとして、厳格な自動車規制の適用を求めて訴えを起こす可能性もあった。
 自動車、経済、環境などさまざまな面でEUの先頭に立ってきたドイツがこれを見過ごせるはずもなく、公共交通機関を無料化することによって自動車の排気ガスを削減するという、大胆とも言える政策に出た。2015年に発覚し、世界中を揺るがしたフォルクスワーゲンの排気ガス不正問題などもあり、環境問題に対するドイツのダーティなイメージを払拭する目的も考えられる。逆に、公共交通機関の利用を促進することによってドイツ国内の自動車産業にプレッシャーをかけるという目的も存在するのではないだろうか。この政策は、公共交通機関の無料化や排気ガスをあまり排出しないタクシーを促進することによって、大気汚染の原因となっている、一般の自動車の排気ガスを削減するものである。インパクトが大きく、よい影響をもたらしそうなこの政策であるが、さまざまな問題点が存在している。
 この政策が発表された当初から問題視されていたのが、費用面の問題である。この政策が進行していけば、ドイツの公共交通機関はほぼ全てが税金でまかなわれることになる。利用者の増加に備えて、早急に設備を整備する必要が生じるが、資金面の問題によって、容易なことではなくなってしまっているだろう。また、この政策は公共交通の利用促進が目的のための手段であるが、このような政策がなくても、都市部の通勤時間帯の公共交通はすでに十分に混雑していると思われる。政策施行前の水準以上に利用者を増やしても、利用者の不快感が強まるだけではなく、利用者の増加によって事件の発生などのリスクも高まることになる。
 更なる問題点として、他国における類似した政策はおおむね成功していないということである。類似した政策がフランスやアメリカの都市でも行われたが、それまで徒歩で移動していた人の利用は増加したが、目的となる自家用車利用者の獲得には至らなかったという。それを目指すのであれば、単なる無償化ではなく、サービスの向上や燃料税などの自家用車向けの規制を増やすことが公共交通機関の利用促進、大気汚染の改善につながるのではないだろうか。

投稿: 五里夢中 | 2019年1月24日 (木) 08時47分

1.はじめに
ドイツ政府は欧州連合(EU)による大気汚染改善に向け、公共交通機関の無償化する案を示した。(1)この公共交通の無償化政策によるメリットとデメリットを挙げ、この政策がドイツにもたらす効果を考察する。
2.環境面からみたメリット・デメリット
 この政策のメリットは、目的として掲げられている大気汚染の改善に貢献することである。ドイツにとって自動車産業はドイツの基幹産業であり、ドイツを代表する自動車メーカーにはメルセデス・ベンツやBMWが挙げられる。(2)一方、自動車に伴う大気汚染問題は深刻で、人体に健康被害をもたらす酸化窒素(NOx)はディーゼル車が主な発生源である。(3)またミュンヘンをはじめ、ドイツ全体の66都市において二酸化窒素濃度の基準値を超えている。公共交通の利用拡大を狙うこの政策はこのようなドイツの大気汚染を改善する効果が見込まれる。また、自動車の走行による騒音や振動も抑制することが可能である。
しかし、この政策によって実際に自動車の交通量が減るかどうか懐疑的である。自動車は利用者それぞれの個人的な目的に向かうことができるため利便性が高く、決まった区間しか移動できない公共交通機関に比べると、現在自動車を主として利用している人々が環境に良いという理由で公共交通機関を利用するようになるとは考えにくい。また、基幹としての路面電車、支線としてのバスという構造も考えられるが、定刻のある交通機関は時間を選ばない自家用車には対抗できない。また、乗用車では公共交通を利用する人が現れる可能性は考えられるが、バスやトラックなどの商業用自動車の大気汚染改善には不向きである。このような長距離を移動する車は国境を越え、排気ガスを広く国内外に拡散する。こうした大気汚染を食い止めることは困難である。
3.社会・経済面からみたメリット・デメリット
 メリットとして、交通費が無料になるため低所得者層であっても公共交通を利用することが可能になる。また、地域住民に限らず観光客においては様々な観光スポットを行き来するため、交通費がかからなければより移動は活発になるだろう。また自動車に関してはガソリン代などの節約にもなりうる。交通費の負担を減らすことで人の行き交いが盛んになるため、ショッピングモールなどの商業地区の売り上げ向上や、サークル・集会など文化的活動の振興、通勤圏の拡大によって職業選択の幅が広がることなど、公共交通無償化による個人の移動圏域の拡大には様々なメリットが考えられる。
 デメリットとして、無料に伴って交通機関の運営や維持費用などの資金繰りの問題が発生する。交通機関が無償化すると、運営の財源は国や地方自治体による税金が使用される。つまり、無償化によって他の政策財源を圧迫することになる。さらに、利益を追求しないため設備投資やイノベーションにも資金が投入されにくくなる。また、車両や路面、路線の整備・保持・管理・修理や、敷設工事・車両増設・既存路線の撤去など運行形態の変更や事業の拡大・縮小などにも多額の資金が必要であるため、その全てを税金で賄うことは困難である。また、交通機関の稼働率や乗客数が増えても、利益を求める形態ではなく税金で運営さているため運転手の賃金は上昇しにくいだろう。このため運転手の勤労意欲や仕事におけるスキル・知識などの熟達にも悪影響を及ぼす恐れがある。仕事量が増え、給料の割に仕事がハードであれば運転手や整備士の人材不足にも陥る可能性がある。それに伴い、業務上の事故やずさんな管理など安全面において不安定になりえる。
5.考察
 公共交通機関の無償化はドイツが抱える深刻な大気汚染を改善する有効的な政策になりえるだろうか。現代の自動車の利便性からみると、この政策は不向きであるように思われる。自家用車を所有する人々はあえて決まりきった時間に決まりきった場所しか通らない公共交通機関を利用するという不便を選びたがらないだろう。例えば、路面電車は規定の軌道を走るため、災害や悪天候、事故などでひとたび通れなくなると迂回をすることができず、事態が収束するまで何もすることができなくなってしまう。交通機関の利用者は遅延や運休によってスケジュールが遅れてしまうが、他の道を選択できる自動車の利用者は公共交通機関に比べてゆとりが持てる。実際、日本でも悪天候や事故などにより電車や新幹線が遅延・運休し、大勢の人が足止めになっているというニュースを時折見かける。このように、自動車の利用者が最大の利点である利便性を捨ててまで環境に配慮した移動手段という理由で公共交通機関を選ぶとは考えにくい。また、この政策を実施したとしても利潤を生みださなければより良いサービスや安全性を乗客に提供することは不可能である。また例に挙げたように、事業に関する運転手や整備士などの勤労意欲やスキルの習熟状況などにも悪影響を及ぼしかねない。大気汚染問題を解決するためのモーダルシフトを促すには自動車を利用する人がメリットを受けるものが効果的であろう。

出典
(1)AFP BB NEWS「ドイツ、公共交通機関の無償化を検討 EUの大気汚染規制対策で」http://www.afpbb.com/articles/-/3162332 (最終閲覧:2019-01-23)
(2)日本貿易振興機構 JETRO「ドイツ自動車産業が直面する課題と今後の展望」https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/2018/ff2b9b14b16b24ff.html (最終閲覧:2019-01-23)
(3)NPO法人 国際環境経済研究所「ドイツ ディーゼル車の排ガス問題」http://ieei.or.jp/2018/03/special201704008/ (最終閲覧:2019-01-23)


投稿: 腕力最弱 | 2019年1月23日 (水) 22時52分

「公共交通の無料化について」
快楽主義

 まず、公共交通機関が無料化となれば、確実に利用者は増えるであろう。利用者が増えると、公共交通機関の運行ダイヤはより豊かになり、さらに市民は利用しやすくなる。そうなると自家用車の数は減り、需要が高まり運行数の増えた公共交通機関が、道路などの移動の空間に多く見られるようになると考えられる。
 公共交通は居住地から停留所、停留所から目的地へは徒歩を前提としている。そのため、公共交通が無料化され利用が手軽で容易なものとなれば、学生やお年寄りをはじめとする自家用車を所有していない人々の助けとなる。また、普段は自家用車を利用している人でも、ガソリンの節約になるなら無料である公共交通を利用するという選択肢が出てくる。
 これらのことから、公共交通を無料にすることは経済的な面で市民が公共交通を利用するという選択肢へと導く。利用人数が増えれば交通政策における公共交通への投資額も増えると予想される。したがって公共交通のサービスはより発展・向上し、さらに市民は公共交通を利用しやすくなる。公共交通の利用が盛んになった交通空間は、自動車が優先された造りから離れていく。
 自動車が優先された造りから離れていくということは、公共交通を利用する人すなわち歩行者に配慮がなされた造りになっていくということである。自動車のための道路や駐車場が拡大された交通空間は歩行者にあらゆる生命の危機を与えた。駐車場が減り、道路は自動車が走りやすいためのものではなく歩行者が安心して移動できるものへと転換されていく。
 街も同じように、自動車を利用する人向けの造りから、歩行者向けの造りへと転換していく。日常生活が歩行を主とするものとされ、“車がないとアクセスが困難”といった状況がなくなるであろう。
 自動車の走行台数が交通空間から減少すると、環境への影響も大きい。排気ガスの削減や化石燃料などのエネルギーの削減にもつながる。また、騒音被害や大気汚染という身近に感じられる害悪を減らすことにもなる。
 さらに、自家用車の走行台数が交通空間から減少すると、渋滞の緩和につながる。とくに路面電車は、一度に大量輸送が可能で、線路という決められた軌道の上を走るため自動車での移動よりはるかに定時制、定間隔性を満たしている。何台もの自家用車に乗っている何人もの人々が渋滞で足止めを食らうということは、路面電車からすると非常に愚かなことに感じられる。自家用車よりも公共交通が多く利用され発展するということは、円滑な道路交通につながる。
 このように公共交通が無料化されることにより利点は多く存在する。しかし懸念される点もある。そもそも裕福な人や自家用車の利便性を優先させる人は公共交通が無料化されても関係なく自家用車に乗り続けるということが想定される。また、誰もが無料で乗れるということは浮浪者のたまり場にもなりうるということである。そうなると公共交通の治安が悪化し利用者が減少したり公共交通へのイメージが悪い方向へといってしまう。浮浪者が乗ってはいけないということではないが、公共交通という移動空間の中で誰もが安心して利用できる空間や質を保つことは簡単ではない。むしろ“無料”というものがその質を保つことを難しくさせている大きな要因になりかねない。
 そもそも“無料”ということに飛びつくのがどのような人々であるのかを踏まえ、無料化を実現するにはその都市の性格にも配慮しなければ、効果は容易に予想できない。

投稿: 快楽主義 | 2019年1月23日 (水) 22時03分

公共交通の無料化に伴う影響
嶺上開花

公共交通の無料化に伴う影響をメリットとデメリットに分けて論じる。
メリットとしては3点あげることができると考える。第一に市民の移動の自由が広がるという点である。無料化によって移動の範囲・利用者ともに拡大することが予想される。第2に環境への好影響である。公共交通の無料化を考える際には、自家用車による個人の移動からのシフトが発生すると論じられる。想定通りにそうしたシフトが生じた場合、人員輸送の効率の観点から考えて、大気汚染は緩和される。第3に自動車の減少により、道路の渋滞が緩和される。これは場合によっては自動車輸送のさらなる促進につながりかねないが、個人の移動の観点ではメリットに含めることができるだろう。
次にデメリットについて論じる。公共交通の無料化は行政にさらなる運航経費を負担させる。このことは他の都市政策への投資の削減をよび、多方面における悪影響をもたらしかねない。また都市部の利便性の向上により、過密の進行が予想される。自動車輸送の減少が都市中心部の駐車場の削減や、道路の縮小につながれば、都市中心部への人口集中が再加速する懸念がある。加えて、公共交通が移動という目的外に使用され、公共交通の治安悪化が考えられる。運賃の徴収は公共交通の用途を移動という主目的に限定する効果があるということは否めない。ただでさえ、無料化による輸送人数の増加による混雑が加速すれば、闇取引や犯罪の温床になるだろう。こうした公共交通の治安悪化は結果として利用客の減少という本末転倒な結末をもたらしうる。都市への影響を考える。公共交通は現状多くの地域で有料である。そのことが都市住民に徒歩という原初的手段を選択するインセンティブになっている。日々の通勤や通学は継続的に交通費のかかることであり、決して小さな負担ではない。そうしたところに無料の交通機関が誕生すればそうした交通費を理由に歩いていた人々はこぞって公共交通の利用を始めるだろう。しかしながら、都市に歩く人がいなくなるということは、それ自体が都市経済のマイナスになる可能性がある。つまり駅や停留所近郊は発展の恩恵を受けることだろうが、その中間地点で店を構える家族経営の小資本などは駆逐されるかもしれない。歩行者がいなくなることによる売り上げの減少と、大規模資本のさらなる進出による経営の悪化は避けられまい。
以上ここまで述べてきたことの前提条件には公共交通の無料化は自動車輸送からのシフトをもたらすということがある。しかし実際にはこれが生じるかどうかさえ怪しい。自動車の利用者はたとえ公共交通が無料化されたとしても、従来通りの自家用車を保有し、移動の自由を謳歌するだろう。これは自家用車の保有が個人の移動の自由の象徴であり、一度獲得された自由を放棄するということが考えにくい、という視点に基づいている。
したがって、私は公共交通の無料化は本来意図していた自動車からのシフトが起こりにくく、むしろデメリットが多いという結論に至った。

投稿: 嶺上開花 | 2019年1月23日 (水) 22時01分

公共交通無料化が欧州で拡大している。一般的に普段から利用している客にとっては僥倖であるが、なぜ政府は公共交通無料化に踏み出したのだろうか。
 要因はいくつもあるが一番に環境問題の悪化である。これは自家用車が欧州で一般化し、交通が増えることによって環境が悪化することが現在、問題になっている。1950年代以降自家用車の普及は広がり一般家庭には一台以上、2016年には先進国だけでいえば二人につき一台所有しているまで普及している。ここで問題なのは環境問題に自動車は大きな関係があるという点である。自動車が排出する排気ガスはガソリン、軽油などを燃焼する際に排出され、大気汚染を引き起こしている。これも一台や二台なら何も問題はないのだが、ここまで自家用車の普及が進み車道が整備された今、目をそらすことが難しいほどの問題になっている。そこで政府は今まで自家用車で移動していた人々に公共交通の利用を促進するために公共交通無料化の案を出したのである。今まで少しの距離を自動車で移動していた市民も無料ならと軽い気持ちで公共交通を利用することになり、結果として環境問題を解決しようと考えたのである。
 次の理由として貧富の格差の緩和である。今までの公共交通も一回一回の値段はさほど高くないにしろ毎日、何回も利用していると馬鹿にならない、その結果十分に交通を利用できない市民は行動を制限される、自家用車の普及が進んでいるとはいえ自動車の維持費やガソリン代は大きい。自家用車の使用を維持できる層の市民も公共交通ですら利用をためらう市民も平等に無料の公共交通を使用することで移動による貧富の差は少なくなる。もちろん自家用車を持っていれば遠くまで行くことができる、そして自家用車を持っていない市民や、公共交通費用が厳しい市民は公共交通無料の地域に限定されるといった違いは生まれてくる。
 しかしここで問題が発生する。それは今まで以上に不特定多数の市民が公共交通を利用することによる治安の悪化である。利用する人数が増えれば必然的にその場に排出されるゴミの量も増加する。ゴミの量や、公共交通の物品の破損が増えればその分費用がかかるのである。公共交通における費用の多くは人件費であるのにこの上さらに人件費をかけ、しかも無料で運行となっては問題になってくるのである。それに加え公共交通の無料化によって今まで公共交通での移動を生活の一部としていた市民が満員などの理由で利用できなくなるという危険性も含んでいる。政府としても無料化による人数の増加は予想できるがどこがどのくらい利用が増加するのかはわからない。地域の所得や、貧富の関係が絡んでくるためである。今まで利用していたバスがいきなり満員で乗れないとなると苦情ものである。
 公共交通の無料化にはこの問題以外にも悪臭、寒さを和らげるためだけの利用なども考えられる。これの難しい点は一般の客との区別がつかないという点である。悪臭はまだしも暖を取る目的の乗車は一般の市民との見分けがつかない。ひどい場合には麻薬取引の現場に利用されることもある。
 次に財源が問題になってくる。上記に述べたが一般的に人件費というのは公共交通において大きな割合を占めている。やはり乗利用人数が増えると悪臭、ごみは避けがたい問題となってくる。そして改善のために人員を増やさなくてはならないのである。その上公共交通を無強化してしまうと今まで入ってきていた収入源がなくなってしまい運行が難しくなることは明白である。それには市民の税金からまかなわれるしかないのだが、市民の意識として環境に考慮して税金を上げられるのはいかがなものだろうかという意識があり、環境問題をそこまで深刻に考えていない市民にとって喜ばしくないのではないだろうか。それに現在自動車での移動が一般的な裕福層にとっては公共料金の無料化は喜ばしくないかもしれない。
 ここまで公共交通の無料化についてのメリットデメリットを述べてきたが、メリットとして環境問題の解決、解決とまでは行かないが率先して環境問題に取り組む姿勢を他の国に見せることで世界的に優位に立つなどのメリットがある。加えて貧富の差が少なくなり貧困層の移動範囲が増加する。しかしデメリットとして治安の問題、今まで日常的に利用してきた市民からの不満、ごみの増加、悪臭などが挙げられ、特に治安の悪化は利用人数が増加すると仕方のないことだが運行中止にならざるを得ない事態にまで発展しかねない。加えてごみや悪臭などの対応に人員を多くさかなければいけなく、新たに収入源を税金でまかなわなければならないといったデメリットがある。
 しかし環境問題のことを考えればここで短期的な視点で赤字であると決め付け判断するのではなく、長期的なスパンで考え、結果的に地球や人類のために有益であると考えられるのではないだろうか。今の赤字よりも将来より生きやすい世の中を作るのに公共交通は有益であるかもしれない。

投稿: 御魚天国 | 2019年1月22日 (火) 16時52分

公共交通無料化が欧州で拡大している。一般的に普段から利用している客にとっては僥倖であるが、なぜ政府は公共交通無料化に踏み出したのだろうか。
 要因はいくつもあるが一番に環境問題の悪化である。これは自家用車が欧州で一般化し、交通が増えることによって環境が悪化することが現在、問題になっている。1950年代以降自家用車の普及は広がり一般家庭には一台以上、2016年には先進国だけでいえば二人につき一台所有しているまで普及している。ここで問題なのは環境問題に自動車は大きな関係があるという点である。自動車が排出する排気ガスはガソリン、軽油などを燃焼する際に排出され、大気汚染を引き起こしている。これも一台や二台なら何も問題はないのだが、ここまで自家用車の普及が進み車道が整備された今、目をそらすことが難しいほどの問題になっている。そこで政府は今まで自家用車で移動していた人々に公共交通の利用を促進するために公共交通無料化の案を出したのである。今まで少しの距離を自動車で移動していた市民も無料ならと軽い気持ちで公共交通を利用することになり、結果として環境問題を解決しようと考えたのである。
 次の理由として貧富の格差の緩和である。今までの公共交通も一回一回の値段はさほど高くないにしろ毎日、何回も利用していると馬鹿にならない、その結果十分に交通を利用できない市民は行動を制限される、自家用車の普及が進んでいるとはいえ自動車の維持費やガソリン代は大きい。自家用車の使用を維持できる層の市民も公共交通ですら利用をためらう市民も平等に無料の公共交通を使用することで移動による貧富の差は少なくなる。もちろん自家用車を持っていれば遠くまで行くことができる、そして自家用車を持っていない市民や、公共交通費用が厳しい市民は公共交通無料の地域に限定されるといった違いは生まれてくる。
 しかしここで問題が発生する。それは今まで以上に不特定多数の市民が公共交通を利用することによる治安の悪化である。利用する人数が増えれば必然的にその場に排出されるゴミの量も増加する。ゴミの量や、公共交通の物品の破損が増えればその分費用がかかるのである。公共交通における費用の多くは人件費であるのにこの上さらに人件費をかけ、しかも無料で運行となっては問題になってくるのである。それに加え公共交通の無料化によって今まで公共交通での移動を生活の一部としていた市民が満員などの理由で利用できなくなるという危険性も含んでいる。政府としても無料化による人数の増加は予想できるがどこがどのくらい利用が増加するのかはわからない。地域の所得や、貧富の関係が絡んでくるためである。今まで利用していたバスがいきなり満員で乗れないとなると苦情ものである。
 公共交通の無料化にはこの問題以外にも悪臭、寒さを和らげるためだけの利用なども考えられる。これの難しい点は一般の客との区別がつかないという点である。悪臭はまだしも暖を取る目的の乗車は一般の市民との見分けがつかない。ひどい場合には麻薬取引の現場に利用されることもある。
 次に財源が問題になってくる。上記に述べたが一般的に人件費というのは公共交通において大きな割合を占めている。やはり乗利用人数が増えると悪臭、ごみは避けがたい問題となってくる。そして改善のために人員を増やさなくてはならないのである。その上公共交通を無強化してしまうと今まで入ってきていた収入源がなくなってしまい運行が難しくなることは明白である。それには市民の税金からまかなわれるしかないのだが、市民の意識として環境に考慮して税金を上げられるのはいかがなものだろうかという意識があり、環境問題をそこまで深刻に考えていない市民にとって喜ばしくないのではないだろうか。それに現在自動車での移動が一般的な裕福層にとっては公共料金の無料化は喜ばしくないかもしれない。
 ここまで公共交通の無料化についてのメリットデメリットを述べてきたが、メリットとして環境問題の解決、解決とまでは行かないが率先して環境問題に取り組む姿勢を他の国に見せることで世界的に優位に立つなどのメリットがある。加えて貧富の差が少なくなり貧困層の移動範囲が増加する。しかしデメリットとして治安の問題、今まで日常的に利用してきた市民からの不満、ごみの増加、悪臭などが挙げられ、特に治安の悪化は利用人数が増加すると仕方のないことだが運行中止にならざるを得ない事態にまで発展しかねない。加えてごみや悪臭などの対応に人員を多くさかなければいけなく、新たに収入源を税金でまかなわなければならないといったデメリットがある。
 しかし環境問題のことを考えればここで短期的な視点で赤字であると決め付け判断するのではなく、長期的なスパンで考え、結果的に地球や人類のために有益であると考えられるのではないだろうか。今の赤字よりも将来より生きやすい世の中を作るのに公共交通は有益であるかもしれない。

投稿: 御魚天国 | 2019年1月22日 (火) 16時52分

「公共交通無料化を考える」 走者一掃 2063字

 今、ヨーロッパを中心に公共交通無料化に向けた動きが広まっている。特に、エストニアでは世界で初めて公共交通の無料化を国土全域に拡大することを予定している。公共交通を無料化することは、多くのメリットをもたらす一方、実現するための課題も多くある。
 まず公共交通無料化によるメリットが何なのかを考える。まず、低所得者層・中間層などを含む一般庶民にもたらす効果は絶大であると思われる。彼らの中には当然車を持っていないという人も多く、公共交通を必要とする人は多い。有料であるがゆえに使用を敬遠してきた人々を、無料化によって取り込むことができる。車を持っていたり、中心部に住んでいて移動に困らないという人も、より気軽に利用することができる。何より、車・徒歩・自転車という移動手段に加えて、公共交通という選択肢が増え、それを以前より選びやすくなるというのは一般庶民にとっては望ましいことだろう。次に、交通事故の減少や渋滞の緩和など、道路環境面でのメリットだ。車依存度が高い社会であればあるほど交通事故のリスクは高いし、渋滞も起きやすい。日本では飲酒運転による死亡事故なども多く起きているが、もし公共交通無料化で公共交通の利用が促進されれば、飲酒運転というのが無くなっていくのではないかと思う。お酒が入っているのはわかっていても、移動手段が車しかないから、悪いとわかっていても乗ってしまうというケースも少なくないはずだ。気軽に公共交通機関を利用できるようになれば、そのようなことを減らせるのではないかと思う。最後に環境面でのメリットについてだ。車社会では当然、車から出る排ガスによる環境汚染が起きやすい。まして今は、世界全体で地球温暖化防止に取り組もうという声が挙げられている時代だ。公共交通無料化は、そんな時代のニーズに合った方策だと思う。
 ただ一方で、本当にこれらの効果が得られるのかという疑問もある。エストニアで公共交通無料化の検証が行われたそうなのだが、その結果、確かに公共交通の利用者は増えたという。しかし、本来の狙いであった車の利用者ではなく、歩行あるいは自転車の利用者が公共交通をより利用するようになったという。車を利用している人々に積極的に公共交通を利用してもらえてこそ、先述したような道路環境面・環境面でのメリットを達成できる。そのためにはただ無料化するというだけでなく、ダイヤの整備や乗降場の整備、混雑の防止なども合わせて取り組み、よりスムーズに便利に公共交通を利用できるような体制を作っていくべきだ。
 公共交通無料化が非常にメリットがあるということを見てきたが、これを実現しかつ広めていくのは簡単なことではない。例えば、日本でこれを実現していこうと思った時、どれだけ実現可能性があるのかというのを考えてみたい。まず立ちはだかるのは財政面の問題だ。無料化は一般市民にとっては喜ばしいことであるが、自治体の側にとっては頭を悩ますところだ。客によって支払われる運賃というのが今までは大きな収益になっていたはずだが、それが丸々無くなるということになる。そうなると、公共交通に関する維持費・人件費等を賄うために何らかの策を練らなければならない。税金を増やすというのが一番考えられる策ではあるが、それをすると反対意見は少なからず出てくるだろう。自分たちの税負担が増やされるくらいならば、公共交通の料金を払うという意見が出てしまえば本末転倒だ。かといって、今の自治体に財政的余裕はあまりない。無理矢理費用を捻出できないこともないだろうが、各自治体には福祉面をはじめとして課題が山積みで、公共交通無料化は優先すべき事項ではないと判断され、中々実現は叶わない可能性がある。それは国家レベルで考えても同様だ。公共交通無料化を国・自治体だけではなく、民間主導で行っていくという事も考えられるが、いずれにせよ財政面での課題をクリアしないと実現は難しいだろう。そもそも日本で公共交通無料化を行っても、公共交通が広まるかというのは微妙なところだ。日本だけでなく、他の諸先進国でも同じことがいえる。また、都市部と郊外でも事情は違ってくる。都市部はそもそも元から車が無くてもどこでも移動できるような交通網が発達している場所が多いので、すんなりと車社会から公共交通社会に移行できるが、郊外の地域はやはり車が無いと厳しいという人たちも多くいる。いずれにせよ、公共交通無料化の実現のためにはまず、しっかりと交通網を整備し、ダイヤの調整等をして公共交通化の下地を作っていかなければならない。
 ここまで、公共交通無料化に関するメリットや、実現のための課題を見てきたが、総合的に考えると非常に良い方策だと私は思う。何より、交通手段に多くの選択肢ができ、各々が自分の経済状況や居住地、その時々の状況に合わせて多様な選択ができるというのが非常に意義のあることだと思う。すぐに実現できることではないが、段階を経て少しずつ課題をクリアしていきながら、それが広まっていくと良いと思う

投稿: 走者一掃 | 2019年1月21日 (月) 23時51分

公共交通の無料化

「交通の無料化は不可能」 四弦和音 2094文字

公共交通の無料化が市民にとっての本当の有益な無料化となるのであろうか。公共交通の無料化が意味することは、利用者からの運賃、利用料を徴収しない代わりに税金からの支出となる。税金から支出されるということは、公共交通を利用するかしないに関わらず一律に市民、国民から徴収しているようなものである。日常的に公共交通を利用する人々にとっては有益な無料化ということができるだろう。通勤通学に際し自らの支出が減少し、その分余剰が生まれることになる。普段から頻繫に利用する場合はこの無料化の利益を享受することができる。
日常的に利用する人々に対し、車での移動が主流となっている人々には無料化の恩恵を得ることができるのだろうか。交通手段の一つとしての公共交通は多くの人が同時にサービスを受けるシステムである。当然ながらそこにプライベートな空間は存在しない。見知らぬ人と一緒になって移動する。自家用車の利用者は自分一人であり、見知らぬ人々が乗ってくることはない。完全なプライベートな空間ともいうことができるだろう。このプライベートな空間から公共交通のような常に緊張したような空間へと移動するかという問題がある。多くの場合は無料であるとはいえプライベートな空間を優先するのではないだろうか。無料化が行われることによって自家用車を利用していた人々が公共交通への乗り換えをするのかどうかという疑問が残る。
徒歩での移動が多い地域であるとすると公共交通の無料化による利用客の増加は見込むことができる。同じ区間を移動するにしても自らの足で歩くことなく楽な移動をすることができる。
 短距離の移動の場合には自家用車を利用するよりも公共交通を利用した方がよい場合もある。環境面を考慮すると短距離の場合は公共交通を利用した方が環境には優しい。公共交通にも様々な形態があるが路面電車は特に環境への負荷が自家用車と比べると少ない。自家用車が普及していった今の時代には環境への影響が少ない公共交通の利用を推進するべきではないだろうか。二酸化炭素の排出が地球温暖化を進行させる原因ともなっている。その二酸化炭素の排出が少ない交通の利用を促進させるための公共交通の無料化は二酸化炭素の排出を抑えるための手段としては有効であると考える。
日本において公共交通の無料化を導入した場合にもこの無料化の恩恵を受けるのは今まで公共交通を利用してきた人々、自家用車という移動手段を日常的に使うことができない人々に限られるのではないかと考えられる。
これに加えて、公共交通機関の無料化によってその他の交通機関への影響も考えられる。公共交通機関といえどもバスや電車のみではない。地方と都市を結ぶ交通機関の営業にも関係してくるのである。この交通機関は移動に不便である地域と都市を結ぶことによるビジネス展開をしている。これに無料化は大きな影響を与える。人々は同じ区間の利用である場合に無料の交通機関を選択することになるだろう。有料の交通機関の利用者は減少していくために経営を続けていくことが困難になるだろう。「無料バスが多くの人々に普及することによって、いままでタリンと一部の地方をつないでいた商業バスの需要は減っていくだろう、と懸念を示している。都市と地方の「移動の自由」を促進するための決定が、これまで地方への移動で大きな役割を果たしていたビジネスの衰退につながる、というのはなんとも皮肉なことだ」。 このように無料化は無料化以前も利用していた人々に有益な制度となるがそれ以外の人々には大きな影響を与えるという側面もあるのである。
 公共交通を利用する人々は主に通勤通学がメインであることが多い。これは都市における利用無料化は地方と比較すると利用客増加という大きな効果を得ることができるだろう。都市では公共交通が発達しているために、移動することを考えると自家用車での移動よりも安価に移動することができる。その上、運行本数も多い。次々と目的の公共交通機関がやってくることで時間に制約されることは比較的少ないと考えられる。しかし、これは都市においての事例でありこれが地方へとシフトするとどうなるであろうか。
 地方における公共交通の経営は赤字である。「地方圏における地域公共交通は、利用者が減少することにより、交通事業者の経営状況が 圧迫され、赤字路線を廃止せざるを得ない等、維持が困難な状況にあります。地域鉄道は約 8 割の事業者が赤字を抱え、乗合バス交通は民間事業者の約 7 割、公営事業者の約 9 割が赤 字となっています」。 国や市町村からの支援がなければ経営を続けていくことの困難な地方路線は数多くある。第三セクターへの経営移管している路線もある。
 日本における無料化は不可能に近い。地方の赤字路線の経営が全額税金で賄われることになる。環境への配慮できる部分は大きいかもしれないが、都市における公共交通の無料化は可能だとしても都市においては不可能であると考えられる。

投稿: 四弦和音 | 2019年1月21日 (月) 12時21分

 公共交通の無償化にはいくつかのメリットがある。一つ目は、環境にやさしい点である。公共交通が無償化されることにより、自家用車を使用する人が少なくなるからである。排気ガスが減り、大気汚染の改善が期待される。しかし、これには他の視点もある。それまでの歩行者や自転車使用者も公共交通機関を利用するようになってしまうことである。歩行者や自転車使用者以上に環境にやさしいものはないので、公共交通の無償化が環境面にやさしいとは一概にはいえないことも事実である。
 二つ目は、地域経済の活性化につながる点である。自らの経験をもとに考えると、若者特に学生は、交通費をできるだけ節約しようとする傾向があるので、なかなか遠出せず近場で買い物や食事を済ませたり、目的地まで自転車や徒歩という移動手段をとったりすることが多い。だから、私たち学生にとっては、無償化が実施されることで、交通費を気にせずいつでも遠出が可能になり、購買意欲も向上すると考えられる。そして、地域経済の面からみても、様々な地方からの買い物客が増えることが見込まれるので、地域経済の活性化が期待できる。乗客の増加は集客力を上げ、地域の経済力をアップさせる。しかし、公共交通の無償化は、交通費の節約に努めたいと思う学生など一部の人々にとってはありがたいものであるが、他の人々にとってはどうだろうか。例えば、経済的に余裕のある人々の立場で考えてみると、無償化が実施されたとしても、彼らはそれまで通り自家用車を使用すると考えられ、簡単に移動手段の転換を図るとは言い難い。交通機関を利用して遠出し、購買行動を起こすとは考えにくい。このように、無償化は一部の人々にとっては移動手段の確保になって、様々な地域に足を運ぶことが可能になるが、経済的に余裕のある人々にとっては特に利点があるわけではなく、生活に変化が生じることもない。このことから、公共交通の無償化が果たして本当に地域経済の活性化をもたらすのか、単なる移動の自由の拡大にとどまるのではないか、という予測に至る。
 三つ目は、交通権の拡大という点である。無償化により、移動の自由が全面的に保障され、市民の移動が増える。しかし、これには問題も生じる。移動の自由が認められることによって、麻薬や覚せい剤といった違法物質の輸送に、公共交通機関が使われるのではないかという問題である。誰でも無償で、制約もなく公共交通機関を利用できるので、違法物質の輸送手段という目的外使用が多発し、犯罪者予備軍が増加する危険性も考えられる。そのような事態は市民の安全面にも影響し、治安も悪化するので、モラル・ハザードを引き起こしかねない。
 次に、無償化のデメリットについてみていく。一つ目は、有料の交通機関の利用客が減少することである。利用客が無料の交通機関に偏り、そうでない交通機関は運営が成り立たなくなることが考えられる。タクシーのような民間会社も乗客が少なくなり、打撃を受けるのではないだろうか。また、利用者が偏ることにより、通勤・通学時の過剰混雑も予想される。
 二つ目は、インフラの整備が行き届かなくなる点である。車両の点検・整備が十分でないと交通事故を引き起こす危険性が高まり、乗客の安全確保にも影響する。乗客に快適な環境を提供することも困難となる。また、無償化によって乗車料金という収入が無くなるので、運営側は儲からず、運営者だけでなく運転手の給料が減少することにもなる。そして、たくさん運転しなければならなくなるので、運転手の低賃金・過重労働が続いてしまい、運転の質が下がり、交通事故も多発する。
 三つ目は、財源をどこにするかという点である。無償化によって乗車料金という収入が無くなるので、増大する経費にどう対応していくかが問題となる。多大な経費には税金を充てるしかないが、それは税金の無駄遣いとも言えるだろう。財政赤字の拡大にもつながりかねない。また、無償化には政府の援助も欠かせない。費用の負担主体の問題がある。
 ここで、公共交通機関の無償化を本格的に検討しているドイツの事例についてみていく。WHOのデータによると、世界で毎年300万人が大気汚染を原因とした疫病で亡くなっているという。ドイツでは、大気汚染による健康被害への危機感が増したことで、電車やバスの利用者を増やして自家用車を減らすという画期的な取り組みが検討されるようになった。無償化の計画以外にも、特定の道路での自動車のCO₂排出を制限する取り組みや、電気自動車へのインセンティブ付与、既存の自動車を改修するなどの施策も予定されている。
 以上のことから、公共交通の無償化の実施に至る際は、そのメリットとデメリットを把握することが必要である。無償化したことによる財政面や治安面でのリスク、その他の交通機関への影響、実効性等を考慮した上で、実施を検討しなければならない。ドイツのように大気汚染を食い止めることを主目的とするならば、料金の無償化よりも、電車の運行頻度を高めるなどのサービスの質向上に努める、自動車に係る税金や駐車料金を上げる、といった施策を推進した方が、自家用車使用者の削減・公共交通機関の利用者増加に効果的なように感じる。

投稿: 気分転換 | 2019年1月21日 (月) 01時37分

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