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ベルリン旅行者(四)――言語能力によって階層化された労働者階級――その例外

20170804 p class="MsoNormal" style="margin: 0mm 0mm 0pt;">20140311 ドイツのホテル労働事情(一)――言語能力によって階層化された労働者階級

 ドイツにおいて、多くの老舗ホテルがその名称の変更を迫られている。地場に根づいてきたホテルが、全国あるいは国際的に展開するホテルチェーンの傘下に入っているからだ。そのため、労働者階級も複雑に階層化され、分断化されている。もはや、労働者階級という言説が、死語となっている。未だにこの概念に固執するものは、カルト集団とみなされるであろう。以下の言説において、ホテルチェーン総体と、ホテル(たとえば、ベルリンにある一個のホテル)という概念区別を用いる。

 ところで、全国展開されているホテルの労働者は、その言語能力によって下記のように階層化されている。

(1)英語あるいはフランス語しか理解しない。多くのホテルは、フランス系資本、たとえばアコールホテル・グループに統合されている。この領域において、フランス資本は欧州において想像を絶するほど強大である。

(2)英語とドイツ語を理解する。ベルリンにおいて支配的言語は、ドイツ語である。

(3)ドイツ語しか理解しない。

(4)ドイツ語とスラブ系言語を理解する。

(5)スラブ系言語しか理解しない。ドイツのホテルにおいて、最下層の労動力、たとえば清掃労働等は、スラブ系あるいはギリシャ系労働者によって担われている。

(1)(2)(3)(4)(5)の順に階層化され、指揮命令化にある。報酬もその秩序に対応している。(1)の人間が最高の命令権を持ち、最高の報酬を獲得する。(5)の人間は、年金賦与権すら怪しい。日本でいえば、派遣労働者に近い存在であり、そもそもこのホテルに帰属しているという意識を有していない。

(1)この階層に属している人間は、ホテルチェーンの本部に属している。彼らは、当該ホテル、たとえばベルリンのホテルの最高責任者である。彼らは、英語あるいはフランス語しか解さない。欧州であれば、ドイツだけではなく他の国でも勤務する可能性がある。チェーン本部に対して責任を負う。

(2)この階層に属している人間は、英語とドイツ語を理解する。英語によって、(1)の人間の命令を(3)(4)(5)の人間に伝達する。但し、(3)の人間を介してである。また、ホテル業界という特殊性から、彼らの労働能力がとりわけ必要とされる。顧客の多くは、英語しか理解しない場合が多い。このホテルにおいて上層に属している。このホテルに対して、帰属意識を持つ。

(3) この階層に属している人間は、ドイツ語しか理解しない。ただし、彼らが、このホテルの実質的仕事を担う。食料等の物資の調達、監督官庁との折衝等は、ドイツ語を介して実行される。契約書はドイツ語で書かれている。

(4) この階層に属している人間は、ドイツ語とスラブ系言語を理解する。この階層の人間は (3)の人間の命令を受けて、(5)の人間の労働を監督する。ここまでが、このホテルに属しているという意識を持つ。

(5) この階層に属している人間は、スラブ系あるいはギリシャ系言語しか理解しない。したがって、文書を介した労働には従事しない。客室清掃等の単純労働に従事する。(4)の人間の命令を受けて、労働をする。その労働は(4)によって点検される。不備があれば、やり直しである。この労働は規格化され、交換可能である。彼らは毎日この労働に従事することは、まれである。

 

 従来の労働者階級は(5)によってイメージされていた。しかし、(1)(2)(3)(4)の人間もホテルを経営する際に、必要である。清掃労働だけでホテルが経営されていると考える学者は、もはやいない。労働者階級という言説が、その言語能力によってバラバラに階層化されている。清掃労働者にとって、英語とドイツ語を解する労働者を自分の仲間であるという認識はない。

 

 この意味はそれだけにはとどまらない多くの論点を含んでいる。本日は階層化された労働者階級という論点だけを押さえておこう。

20140311 ドイツのホテルにおける労働事情(二)――言語能力によって階層化された労働者階級――その例外

数年前、以下のようなブログ記事を執筆した。それは、本日執筆した文章と全く異なっている。概略的に言えば、本日のブログは、

(1)英語しか理解しない。(2)英語とドイツ語を理解する。(3)ドイツ語しか理解しない。(4)ドイツ語とスラブ系言語を理解する。(5)スラブ系言語しか理解しない。」という(1)~(5)の階層分化を前提にしている。しかし、チェーン店に属していない小規模の老舗ホテルの場合、

(2)英語とドイツ語を理解する。(3)ドイツ語しか理解しない。」という階層分化を前提にしている。このような例外的なホテル労働現場もある。2007年のブログ記事は、このような例外的なホテルに滞在した経験に基づいている。ここでは、清掃業務もまた、ドイツ人労働者によって担われている。それゆえ、その仕事も画一的ではなく、また臨機応変になされる。また、部屋の清掃に関して、ホテル顧客の細かな要求にも対応できる。

このようなホテルもまた、例外的には残存している。強固な顧客網に支えられた伝統的ホテルに当てはまる。少なくとも、戦後すぐ、あるいは戦前からの伝統を持つホテルに当てはまる。地方都市、とりわけ人口数万程度の都市であれば、このようなホテルに滞在することも可能である。そのようなホテルを筆者もいくつか知っている。とりわけ、1週間以上滞在する場合には、とりわけ快適である。清掃労働者と会話を交わし、冗談も言えるからだ。クリーニング等も外注されず、そのホテルで完結している。

このようなホテルは、今後生き残れるのであろうか。

 

 

20071015 ベルリンのホテルと日本のホテルの差異――労働条件の差異

 

ベルリンのホテルと日本のホテルとの差異を論じてみよう。もちろん、同程度、三つ星、あるいは二つ星程度の筆者が宿泊したホテルとの差異である。超高級ホテルとビジネスホテルのサービスの差異を論じても仕方がないからである。また、その知識も筆者の体験に依存している。普遍性はほとんどない。

この両者の差異を論じるに際して、労働条件が問題になる。ドイツにおいて、基本的に年金のない労働は存在しない。あるホテルにおいて労働する労働者は、そのホテルに対して帰属意識を持つ。それにたいして、日本の場合、ホテルの中枢的労働、つまりフロント業務、営業等を除いて、多くの場合、派遣労働、パートタイム労働等の低賃金労働に依存している程度が高い。

それに対して、ドイツの場合フロント労働者と同様な年金つきの労働者が多い。もちろん、賃金の差異は職種に応じてある。しかし、同一の企業体に属するという帰属意識は同一である。

ところで、以下は全くの体験に依存している。ドイツのホテルに宿泊した日数も、日本の場合よりも多い。しかし、日本のホテルに宿泊した場合よりも厭な体験をした回数はすくない。最近も日本のホテルに宿泊したときにいやな体験をした。朝食のトマトジュースの中に、紙パックの蓋が入っていた。単純なミスである。しかし、このような単純なミスをドイツのホテルで体験したことはない。

その理由として、労働の在り方に関する両国の差異があるのであろうか。それとも、日本人はドイツ人に比べて勤勉ではなくなったのであろうか。私の個人的見解では、両者の勤勉性について差異はないであろう。

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