いしいひさいち官僚制論(その四)――前例主義の欠陥
いしいひさいち『ドーナツブックス・いしいひさいち選集』第11巻、双葉社、1986年、132頁。
いしいひさいちの漫画家としての評価は、天才と言うしかない。天才であるがゆえに、彼が当初意図していない結果を暗示している。東京電力福島第一原子力発電所が築40年ということもあり、日本の大惨事をもたらした。対照的に、東京電力株式会社福島第二原子力発電所は、ほぼ同じような打撃をうけながらも、そのようにはなっていない。
それは、過去40年間において、様々な部品が劣化し、機能不全に陥っていたからである。それに対して、40年間安全であったがゆえに、安全であるという命題が対置される。この命題は妥当性を持っているのであろうか。官僚は前例主義を取りがちである。40年安全であれば、今後も安全であると。しかし、この40年間に主体は、明らかに老化している。客観的条件も変化している。にもかかわらず、前例主義を主張する官僚は、馬鹿でしかない。
このような命題は、常識的にはありえない。事実、いしいもまた、この命題に反論していない。しかし、この命題が根源的に錯誤していることは、明らかである。築40年のアパートが、そろそろ限界に達していることはあきらかである。にもかかわらず、ある論者は40年安全であれば、今も安全であると主張する。その馬鹿さ加減を漫画という形式において、明瞭に提示した。
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