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書類至上主義という病理――下部組織による書類改竄に関する政治学的考察

2014011720131209の改稿) 書類至上主義という病理――下部組織による書類改竄に関する政治学的考察

官僚機構において、しばしば下部組織は上部組織に上げる書類を改竄する。第一に、この書類改竄の目的は、義務を持っている労働者が責任を逃れることにある。現実態とは異なる事実を記載することによって、下部組織は降格、解雇さらに刑事訴追等から逃れることができる。労働者の現在の地位と賃金は、責任を安泰である。

第二に、現状維持という安泰感は、それ以上の安楽をもたらす。それは、書類至上主義と言われる病理と関連している。この用語は私の造語である。現実における危機を現実態においてではなく、書類の上で解消する。当然のことながら、現実態において危機は残存している。しかし、書類を作成する下部組織は、それによって自己満足に陥る。危機は去ったと。上部組織もそれについて気が付いている。気が付かない上部組織は馬鹿である。しかし、気が付いていて、それを黙過する上部組織は、なお馬鹿である。いずれにしろ、上部組織の暗黙の了解のもとで、下部組織は書類を改竄する。

第三に、書類を改竄することは、現状維持を目的にしている。現状が過去と同一の状態にあるという虚偽の報告書を偽造する。この病理は、官僚化した組織に特有なものである。組織を活性化するような積極的姿勢は評価されない。むしろ、それは疎まれる。現状の危機を報告することによって、下部組織が新たな仕事を引き受けることになる。つまり、「負担が増える」。官僚化した組織においてこの言葉は、水戸の御老公の印籠に相当する。書類上が現状の危機を表現していれば、下部組織の仕事が今後増えることは明白である。それを回避するために、短絡的に書類を改竄する。書類的総合性があれば、仕事は増えないからである。現状が書類の上で過去と同一であれば、問題ないとされる。前例主義あるいは現状維持志向が、官僚組織の通弊である。

この書類至上主義は、旧ソ連末期における書類上の食糧の確保と現実態における食糧危機に典型的に妥当している。毎日のように、ゴルバチョフ・ソ連共産党書記長のもとに資料が下部組織、各連邦共和国から上がってくる。それによれば、旧ソ連では十分すぎる食糧があった。輸出も可能であった。しかし、街の食料品店では、長蛇の列が食料を求めて形成されていた。食糧の緊急輸入が常態化していた。旧ソ連住民には、十分な食料が供給されていなかった。食糧危機が蔓延していた。ゴルバチョフ・ソ連共産党書記長は、書類を見る気力を喪失したはずである。書類上、ソ連は安泰であった。しかし、現実態において前世紀末にソビエト連邦共和国自体、そしてソ連共産党が崩壊した。JR北海道の場合には、20119月に中島尚俊社長が、20141月には坂本真一相談役(元社長)が自殺している。経営者が死をもってその責任を果たすことになった。官僚集団あるいは官僚化した組織は、この病理に多かれ少なかれ侵されている。その危機を回避できる集団的健全性が求められている。

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