大間原発建設に関する地方自治体による反対運動――函館市歴代市長による不作為と北海道知事による不作為の狭間における函館市の作為―――政治的不作為という概念を媒介として
20121031 大間原発建設に関する地方自治体による反対運動――函館市歴代市長による不作為と北海道知事による不作為の狭間における函館市の作為―――政治的不作為という概念を媒介として
本稿では、政治的不作為の問題を、大間原発建設に関する地方自治体による反対運動を事例として考察してみたい。2週間ほど前のブログで以下のように記述した。「大間原発が青森県大間町に建設中である。2011年3月における東京電力株式会社福島第一原子力発電所の事故を受けて、一旦その建設が中断されたが、政府によって建設が再開されている。その対岸に位置する函館市において反対運動が展開されている。さらに、住民運動だけではなく、工藤寿樹函館市長率いる函館市が『大間原発無期凍結』に関する請願書を提出している」。[1] この事実から推察されることは、函館市は2012年になって初めてこの原発に反対を表明したことである。もちろん、ここで問題にしているのは、市民の自発的運動ではない。地方自治団体が行った行為を問題にしている。
ここで初めて反対運動を実施した言うことは、水面下で旧通産省、現経産省等の中央政府に対して、要望を提出していた事実を否定するのではない。それ以前の1960年代後半以降、歴代の市長が様々な要望を中央政府に提出していたのであろう。しかし、明白な請願書という形では提出していない。中央政府の政策に反対することは、どのような意味でも地方自治団体にとって有益ではないからだ。ここでは、過去50年近く、函館市はこの問題にたして何もしなかったと言われても仕方がない。まさにこの問題に対する不作為(=しない)が表面化している。
地方自治体としての北海道もこの問題に対して不作為を表明している。明白な大間原発建設反対という政治的作為は、泊原発再稼働を推進している北海道の政策と矛盾するからである。泊原発を容認し、他県の原発に反対することは、滑稽ですらある。大間原発建設反対は、泊原発反対と同義である。したがって、北海道はこの問題に対して、不作為を表明している。
数十年間の歴代函館市長による不作為と、函館市が属している北海道の知事による不作為という状況のなかで、現函館市長の作為は、どのような政治的結果を産出するのか。中央官庁そして中央政府からすれば、この行為は奇妙なものに映現することだけは確かであろう。
[1] 本ブログ「20121017 大間原発建設に関する地方自治体による反対運動」
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