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ある地方都市における公共性の衰退――函館十字街における大衆浴場の消滅

20120906   ある地方都市における公共性の衰退――函館十字街における大衆浴場の消滅

 

 地方都市において十字街という地名を持った地域がある。主要道路が交錯していることからこの地名がつけられたことは、容易に想像できる。北海道では函館十字街が有名である。この地域には昭和30年代までは映画館、高級料亭等が林立し、繁華街として北海道一の繁栄を誇ったそうである。しかし、21世紀においてこの地域にその面影を探すことは容易ではない。

 しかし、21世紀になってもこの地域には一定のその面影が残っていた。その象徴の一つが大衆浴場、つまり銭湯の残存である。少なくとも、十字街から徒歩10分圏内に、数軒の銭湯があった。しかし、2003年の草津湯の廃業を嚆矢として、その後壽湯の廃業、宝湯の廃業が相次いだ。2012年現在で残っているのは、白山湯だけであった。その最後の砦も201211月をもって陥落するそうである。2013年には、この地域から大衆浴場はすべて消滅する。その原因はここで述べるまでもあるまい。全国的に大衆浴場が消滅しているからだ。

 しかし、ここでは公共性の涵養という観点から短評を掲載しておきたい。大衆浴場の消滅によって公共性を学ぶ場所がなくなっている。東京や大阪に居住していると信じられないが、電車、そしてバス路線すら廃止されている。空港行きのバス以外のバス路線がほとんど機能していない町は、少なくない。子供、否大人もまた他者とどのように振る舞うべきか、ということを大衆的乗り物、そして大衆浴場において学んできた。その場所がなくなっている。とりわけ、大衆浴場では、文字通り裸の人間が関係する場所である。その中には粗暴な人もいる。彼らとどのような関係を結ぶのかということを、この場所で暗黙のうちに学習してきた。

 公共性を学ぶ場所を喪失した我々は、どこにおいて公共性を具体的に形成できるのであろうか。悲観的解答しか思い浮かばない。

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