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ホッブス、ロックの思想と、東京電力

20110630「第4章ホッブスの思想」と「第5章ロックの思想」に関する時事的考察――東京電力福島第一原子力発電所事故との関連において

 ホッブスとロックは、近代社会契約論を樹立したイギリスの思想家である。17世紀イギリス革命を理論的に基礎づけた思想家として著名である。両者の思想家の特色は、以下の理論を形成したことにある。すなわち、近代国家を正統化するのは、国民の意思でしかないことである。人間が社会契約によって本来保持していた自然権を第三者に譲渡する。その目的とは、何か。ホッブスの場合は、人間の生命を維持することであり、ロックの場合は、人間の私的所有の保障である。

 今回の東京電力福島第一原子力発電所の事故によって、国民の生命と私的財産が侵害されている。もちろん、この事件は、東京電力株式会社と権利を侵害された国民との間の私的関係にしか過ぎないという見解もある。被害を蒙った国民が、一営利企業である東電に損害賠償請求権が発生するだけである。しかし、原子力政策は国策として推進された。東京電力株式会社福島第一原子力発電所の安全基準は、保安院そして究極的には日本国家として承認された。この事故は想定外の出来事によるものではない。むしろ、予想通りに、起こるべきして起きた。

 この安全基準を保安院、及び原子力委員会は承認してきた。その意味で国家が事故に対して責任を負う。東京電力株式会社福島第一原子力発電所が放射性物質を拡散していることに対して、東京電力株式会社と日本国政府が責任を負う。

 以上の推論が正しい場合、ホッブスとロックの思想はこの事故の問題を考察する際、有益である。まさに、東京電力株式会社と共同責任を負う日本国政府は、大気中に放射性物質を拡散することによって、国民の健康、そして国民の生命を犠牲にしている。また、放射性物質によって汚染された農産物は、その価格下落が著しい。まさに、私的所有権が侵害されている。

 生命の維持が危機にさらされ、私的所有権が侵害されている。日本国民はこのような政府に対して信を置くことできようか。

 

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