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喫煙の権利と法――禁煙の思想と喫煙場所

 喫煙の権利を保障することにおいて問題になるのは、幸福追求権に属する喫煙権と所謂嫌煙権の両立性に関する事象であろう。まず、前者に関して、憲法13条は国民の幸福追求権を認めている。この権利は、基本的人権の一つであると承認されている。喫煙という行為がこの幸福追求権に属することは判例で認められている(最高裁昭和45916日大法廷)。この判決は被拘禁者の喫煙の権利に関する判例であるが、被拘禁者の人権を制限することの妥当性を主張している。国民の権利の一つあるとしても、被拘禁者の人権を制限することの正当性を主張している。

 逆に言えば、被拘禁者を除く成年の国民の権利として認められている。国民が労働者として規定された場合でも、この権利を保持していると考えられている。

 次に、所謂嫌煙権は1970年以降、新しい人権の一つとして社会的に承認されている。受動喫煙という概念が社会的に承認されてきたからでる。その法的表現として健康増進法25条がある。分煙が明確に規定されている。しかし、分煙が困難である場所において、禁煙が施行されている。飛行機等ではほぼ全面的に禁煙化されている。健康増進法の分煙が技術的観点から困難であるからだ。しかし、この禁煙という概念は法的なものではなく、ただ社会的なものでしかない。

次世代新幹線(JR東海)では禁煙が唱導されているが、喫煙部屋も残存している。全面禁煙という思想と限定された空間としての喫煙場所は、理念上両立しうる。

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労働は恥?--ニートの原初風景

 労働しない若者、中年、壮年、そして老人が増えている。そのうち労働しない若者が「ニート」と呼ばれている。この意味は単なる若者の怠惰性を表現しているわけではない。後期近代において、労働が社会的尊敬を受けなくなったことと関連している。労働するよりも、公営賭博、株式市場等における投機的行為や親族の遺産で暮らすほうが社会的により承認をうけることと関連している。汗水垂らして労働するよりも、財テク等によって稼ぐほうがより社会的に尊敬されることになった。

 一方で、後期近代において労働におけるサービス産業の役割が拡大したことによって、サービス産業に従事する労働者の割合が増大した。かつてのこの産業従事者に比較して現在の労働者の賃金はかなり下落している。とりわけ、巨大サービス産業、たとえば巨大スーバーマーケット、巨大ファーストフード店において、一部の管理職を除き現場でサービスに従事する労働者の賃金の下落は著しい。

 このような現代社会において、労働をすることは恥という意識が生じることもやむをえない。ある壮年男性が数十年まえに体験したことをここで披露してみよう。それは、彼があるガソリンスタンド労働者として働いている時の体験である。ガソリンスタンド労働者はガソリンを車に入れるだけではない。煙草の灰皿を代え、フロントガラスを拭かねばならない。客に対して愛想をふるまわねばならない。そこで働いている時、トヨタクラウンの最高級車に乗車した彼の同級生がガソリンを入れるためにそのスタンドに入ってきた。当然、彼はその同級生に対して、対等な口を聞く。「よ、元気!」それに対して対等な口をこの労働者がきけるはずもない。

 この同級生はいまどきの言葉を使用すれば、ニートであった。父親の車を乗り回していた。しかも、その車は日本の最高級車であり、助手席には今風の彼女が同乗していた。しかし、この労働者は、このニートに対して、卑屈な感情をもったのも事実であった。客観的に言えば、淡々と労働をするだけでよかった。しかし、この青年はそのボンクラに対して劣等感をもったのも事実であった。逆に言えば、今日のニート君もまた、労働者にその種の優越感をもっているのも事実であろう。

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